教育の再生

 日本の1人当たりGDP(国内総生産)が※1OECD諸国において、ここ数年で3位から18位に下がった。今後ますます低下する傾向にある。対照的に、※2北欧諸国と呼ばれる5ヶ国は、すべてベスト10に入っている。

 この日本と北欧の差は、学校教育の差に起因するともいわれている。北欧の中でも特にフィンランドは、教育レベルが世界最高水準にある。日本の教育と大きく違うのは、教育による格差を作らないことが挙げられる。基礎教育は9年間で、その間、成績表もテストもないのだそうだ。他人と比べるのではなく、本人が理解できたかどうかという点が重視されている。日本や韓国のような受験戦争もない。

 昔の試験は○と×だけでなく、△があった。答えが間違っても、途中の式が合っていれば途中点として何点かもらえた。それが、マークシートという試験制度の導入により、結果だけを競う試験になっていった。このことが、生徒の自由な発想を阻害したと同時に、教師の裁量や資質の低下なども招いたのではないだろうか。

 昔、教師という職業は聖職であり、師の影を踏むことすら許されないという、権威ある職業であった。今のように生徒から不敬な態度をとられるようなことはなかったはずである。先生を馬鹿にするような教育の場から、子供の心に、国家を担おうなどという意識が生まれることは決してない。ともかく、そのような風潮を許している、現代日本社会の病巣を取り除かなければ、国の衰退傾向に歯止めはかけられない。

 教師の資質を向上させるには、当然、優秀な人材を登用していくことであるが、現実の具体策としては、やはり給与を増やすことではないだろうか。公務員の給与については賛否が分かれるであろうが、教職という、日本の将来の命運に関っている職業に対しては、相応の報酬が与えられてしかるべきかと思う。東大卒のエリートが、こぞって外資系の証券会社に就職するのも、やはり金の力であり、優秀な人材を確保するためには、ある程度のインセンティブは必要である。教師が自分の職業に誇りを持つ大きな要因ではあると思う。その上で教師にある一定の自由裁量権を与えることが必要だと思われる。
 そしてもう一つ大事なことは、優秀な人材を、手放しで海外に流出させないことである。

 しかしながら、教育を考えるとき、本質的な課題は、金銭的な誘引にとらわれない、国家的な目線を持つエリートを如何にして養成し、子供の教育をゆだね、また彼らによって魅力ある産業を出現させ、その成長を通じ、将来に夢を描けるような国づくりをしていくかである。真剣な国レベルでの取り組みが必要であり、急がなければならない。

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※1OECD諸国 ・・・ 経済協力開発機構。先進国30ヵ国が加盟している。
※2北欧諸国 ・・・ アイスランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド


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