紫外線と目

今年、福岡の梅雨はあっという間に明けてしまい、屋外に出るとあまりの暑さに息苦しく感じるほどです。

春からの紫外線による日焼けは、皆さん関心が高いようですが、紫外線の「目」への影響は気にしていますか?

医療品メーカー「ジョンソン・エンド・ジョンソン」が今年の3月、インターネットを通して実施した調査(1000人対象)によると、およそ8割の人が、紫外線が原因で将来目の病気になりうることを「知らない」「よく分からない」と答えたという結果がでています。また、日ごろ帽子やサングラスなどを着用して紫外線から目を守る工夫をしている人は3割しかいなかったそうです。

私たちは、スキー場など反射の強い場所に出かける時などはちゃんとサングラス等を準備して行きますが、日常では肌に対する紫外線の影響については気に掛けても、目に対しては「まぶしいなあ」と思うくらいです。


黒目に白目がかぶさる翼状片

目の病気といえば、結膜炎・ドライアイ・白内障といった病名がなんとなくわかる程度で『翼状片』(よくじょうへん)という病気は、皆さんあまりご存知ないと思います。翼状片は、白目と黒目の境目が紫外線によって傷ついて、その防御反応や自己修復の過程で目の細胞が増殖して起こる病気です。初期症状では充血や異物感、ドライアイ、眼精疲労などが表れ、進行するとメガネでは矯正できない乱視や、視力の低下を引き起こします。

紫外線は耳からも差し込んで来るのだそうです。耳から入ってきた紫外線は鼻側に集まりやすいので、目の鼻側から病気が発症します。さらに重症化して、手術をしても角膜に傷が付いていて元の視力に戻らないことがあり、最悪の場合失明することもあります。

金沢医科大学 眼科学の佐々木教授の調査によると、石川県のある自治体では50歳以上の約7%が翼状片を発症していました。佐々木教授はマネキンの目に紫外線を検出するセンサーを埋め込み、太陽高度と紫外線量の関係を調べました。太陽が真正面に来るようにマネキンを置くと、目に入る紫外線量が最も多かったのは、春から秋では午前9時ごろと午後3時ごろでした。太陽高度が最も高い正午前後でないのは、額やまぶたに遮られて直射光が目に入りにくくなるためだということです。一方、太陽高度が低い冬では正午ごろが最も目に入る紫外線量が多くなりました。

さらに、ビルや路面での反射が多い東京都内のオフィス街と、反射物が少ない金沢医科大の屋上で、目に入る紫外線量を比べました。金沢で太陽を背にした場合に目に入る紫外線量は真正面の場合の1〜3割にとどまりましたが、東京のオフィス街では大半の時間帯で5割以上と高くなりました。このように、都市部では一日中ほぼ同じ強さの紫外線が目に入るという現象も確認されました。

また、マネキンで日傘の効果を検証しましたが、背後から直射してくる紫外線は防いでも、散乱されて目に入る紫外線を防ぐ効果はほとんどありませんでした。

車の運転や長時間屋外を歩く時など、ぜひ紫外線を防ぐ効果のある眼鏡やサングラスをかけていただきたいと思います。つばの長さが7センチ以上の帽子をかぶり、眼鏡やサングラスは、上・下方や側面から光が入りにくいようなタイプを選ぶことが望ましいと佐々木教授は呼びかけています。

翼状片は、きちんと予防をすれば発症しないといわれています。日本は医療水準が高く、失明に至ることは少ないということですが、肌への紫外線を防ぐことと同様に、目への影響も多大であると認識して、特にオフィス街では紫外線の反射と散乱が著しいので、これからの季節はしっかり予防したほうがよさそうです。皆さんも十分注意していただきたいと思います。

K・N
この記事に関するご意見
ご感想はコチラ