梅 雨

薫風さわやかなときが終わり、やっとと言うか、とうとうと言うか、九州北部も梅雨入りしましたね。平年に比べ8日、昨年に比べ5日遅かったようです。

革靴は痛む、ズボンはよれよれになる、せっかくの休みも行くところがない、洗濯物は乾かない、カビは生える、おまけに食中毒にはかかると、まったくもっていやな時期ですよね。ああ憂鬱だー。と言う声が聞こえますよ。

でも、人間はもちろんほとんどの生物は水なしでは生きてはいけません。日本では一年分のほとんどの水を梅雨の時期に頼って蓄えます。もし日本に梅雨がなければ、四季のほとんどが乾期になり、秋に実るはずの稲は枯れ、食べ物はなくなり炊事洗濯お風呂はもちろんトイレの処理にも困ってしまいます。だから、嫌ってばかりもいられません。日本にとって梅雨はとても大切な時期なのです。

はいはい、わかっておりますよ。それぐらいのことは。

とおっしゃるあなた、アジサイをじっくりとご覧になられたことがありますか。青や紫、ピンク色が雨模様になんともいえない風情をかもし出してくれますよ。「紫陽花」と書いて「アジサイ」と読むのですよねえ。その由来はですね。と、この次にします。ちなみにあの薄紫の花びらに見えるのは実は花じゃないそうですよ。まあそんなことはどうでもいいですね。

はいはい、見たことありますよ。なかないいものですよ。アジサイも。でもねー。

とおっしゃるあなた、番傘作りでもしてみてはいかがです。番傘は、質素な中にも粋な男性的雰囲気がありますよね。素材の竹と和紙がなんとも日本人の心を捉えると思われませんか。逆さに握って、しゅっしゅっと雫を振り切る様は恰好いいですよ。下駄でも履いて番傘差して出かけてみてはいかがでしょう。もっとも、出来上がった時には、梅雨が明けているということになるでしょうから、その時は室内装飾品としても味があるんじゃないでしょうか。

はいはい、確かに、味わいがあって面白そうですね。しかし作り方がわからないんだよな。

とおっしゃるあなた、梅雨どきは仕方がないじゃありませんか。

雨見て一杯、はいかがです。塩辛でも肴に、窓外のそぼ降る雨をじっくりと、そしてぼんやりと眺めながら、熱燗をちびりというのは、どうでしょう。

はいはい、それはいい思い付きですねえ。梅雨どきの熱燗か。いいんじゃないですか。ところで私は飲めないのですが。

と、おっしゃるあなた。・・・・・テルテル坊主でも下げて、ひたすら梅雨明けを待ってください。もっとも、梅雨入りしたばかりですけどね。

水の豊かな国に生まれ、日本中に雨の恵みが満ちて、木々や草花が生命の泉を蓄えるこの時期、洗われる緑を目にし、雨の音を楽しむ。と、そんな気分でこの季節を過ごすことができれば、梅雨もまた楽しからずやではないでしょうか。


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