メタボリックシンドローム

近頃、テレビや雑誌などで、『メタボリックシンドローム』なる言葉を、頻繁に見聞きします。

お腹がでっぷりとした人たちが出てくるのがそうです。比較的新しい概念で、以前は「内臓肥満症候群」などと言われていました。
「メタボリック」とは代謝異常のことであり、「シンドローム(=Syndrome=症候群)」とは、一群の多彩な症候で形成されるまとまった病態のことです。○○症候群、××症候群などと、接尾語として使われています。

1.肥満
2.高血糖
3.高中性脂肪血症
4.低HDLコレステロール血症
5.高血圧

の内、3つ重なると「代謝異常症候群」、つまり『メタボリックシンドローム』と診断されます。5つの症状のひとつひとつの重症度はそれほどでもなくても、重複することで、それぞれの症状が相乗的動脈硬化の進行を早め、その結果、狭心症、急性心筋梗塞、脳梗塞など命に関わる心血管疾患発症の増加に繋がってしまうのです。

ひとつひとつをとってみると「病気」ではないのに、3つ合わせると「立派な病気」となってしまう『メタボリックシンドローム』なるものが、なぜ生まれてしまったのでしょう。

それは、日本人の生活様式の急激な変化、つまり高カロリー・高脂肪食によるエネルギーの過剰摂取、運動不足によるエネルギーの消費不足によりエネルギーが蓄積した状態になっていることが原因と言われています。

生活が豊かになって飽食し、おまけに体を動かすことが少なくなってしまったために生まれた病気ですので、現代人である、私たちみんなに、この病気になる可能性があるといえます。

上記をもう少し具体的に表現すれば、以下のようになります。5項目の内3項目以上に当てはまると、あなたは「メタボリックシンドローム」と診断されてしまいます。

1.腹囲 ウエスト周囲径  男性85cm以上、女性90cm以上
2.空腹時血糖 110mg/dl以上
3.中性脂肪 150mg/dl以上
4.HDLコレステロール 40mg/dl未満
5.血圧 130/85mmHg以上

1番目と5番目の項目以外は、自分ではわかりにくいので、健康診断を積極的に受けることにより、この症候群を「早期発見」でき、またその「予備軍」かどうかを知ることができるのです。

2006年5月に厚生労働省は、40〜74歳の中高年世代5,700万人のうち、2,000万人近くがメタボリックシンドロームとその予備軍で、特に中高年男性では2人に1人が該当するという推計を発表しました。
そして、2006年の医療制度改革で、2008年度から企業や健保組合などの医療保険者に、40歳〜75歳への健康診断・保健指導の実施が義務付けられることになりました。

20歳以上で約6割にとどまっている健康診断の受診率上昇が見込まれる中、厚労省はこれに合わせ、保健指導をメタボリックシンドロームを減らす機会として活用することにしたのです。

また、新しい保健指導では、この症候群の指標となるウエスト周囲径(腹囲)や血圧、血糖値などの数値の改善を目標として、健康診断結果を見て、
〈1〉腹囲や血圧などに問題が多く、改善が不可欠な場合の“積極的支援”
〈2〉一部に問題はあるが現状維持でもいい場合の“動機付け支援”
などを、状況に応じて実施するということです。

“積極的支援”では、個別面接などで対象者の仕事や食事の状況を把握したうえで、食生活の見直しや運動などの目標を立て、その後、生活習慣の改善状況を、3〜6か月ごとの面接のほか、必要に応じてメールも使って確認し、半年をめどに腹囲などの数値の変化を点検し、“動機付け支援”では、個別面接や詳細なアンケートで、対象者に自発的な生活習慣の改善を促すという内容のようです。

また、厚生労働省は、新たな指導方法を徹底するため、プログラム策定に加え、保健師らを対象にした研修も行う方針のようです。

“メタボリックシンドロームではない!”という方のために、その予防方法を調べてみました。メタボリックシンドロームの場合、その「予防方法」と「治療の基本」(投薬などの医療行為以外)は同じもののようです。

1.禁煙する
2.食事療法として
 ①カロリー制限:25〜30kcal/標準体重
 ②コレステロール摂取制限:1日当たり200〜300mg以下
 ③食物繊維を摂取すること
 ④アルコール制限:エタノール換算で1日当たり30g以下
 ⑤塩分制限:1日当たり7g以下
3.運動療法として
 ①有酸素運動をする:速歩、水泳、ジョギングなど
 ②その強度:心拍数=138−年齢/2
 ③その量・頻度:1日30分以上を週3回程度
4.ストレス解消する

おわかりのように、食事と運動習慣の修正が重要です。メタボリックシンドロームと診断されれば、治療の基本ですから、当然やらなければいけませんが、“予防”の段階では、一念発起が必要になるでしょう。豊かになって、病気になるという、なんとも皮肉なことになっているのです。しかし、自分の命は自分で守らなければなりません。1日のタバコの量を減らす、3食のうち1食はカロリーを減らす、1週間に1度は運動する等々(ちょっと甘いと言われそうですが・・・)。 さあ、頑張りましょう。



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