「世の中で、皆さまはそれぞれに努力をしていらっしゃるのですが、
一生懸命仕事をされても、成果をあげられる人、あげられない人の両方があります。
成果をあげられる人をA、あげられない人をBとすると、Bの人は怠けて遊んでいるかというとそうではなく、
むしろBの人のほうがAの人よりも一生懸命、長い時間休まないで、働いていることのほうが多いのですが、
結果を見ると、成果につながらない人がわりあい多いのです」
どうしてこういうことになるのでしょうか。
「Bの人は、やることなすことに無駄が多く、やってもやっても、エネルギーが無駄に流れてしまって成果につながらないわけです。
無駄が多いということは、例えば、自分の手元にある商品の価値がわからない、そのものの持っている命がわからないから、
自分の手の中にある商品の魅力を見いだすことができなくて、たえず目がよそへ散ってしまうことが多いということです。
当然、Aの人は、無駄がない、あるいは、無駄が少ないということになるわけです」
それではどうしたら無駄が少なくなるのか。鍵山さんは言います。
「当然、いつもこういうことに気をつけて、気づく人になることです。
これは当たり前のこと、わかっていることですが、気づく人になかなかなれない。
なろうと思ってなれるものではありません。
どうしたら気づく人になれるかというと、私はいつも気づく人になる方法を2つお話ししています」と。
気づく人になる方法は何だと思いますか?
「1つは、微差、あるいは僅差の2つをいつも追求し続けることです」
と言われています。
「例えば、いままでAという方向でものを売っていたが、これをBに変えるとします。
この差が大きければだれでも変えるのですが、ほんのわずかしか結果は変わらない、
あるいは、成果がよくなるかどうかもわからないということになると、
だいたいやらないで、いままでやってきた方法を続けてしまいます」
「どうしてかというと、やり慣れたほうが楽だからです」
「どんな小さなことでも今までやってこなかったことをやろうとすると抵抗があってなかなかできません。
そしてAとBとの差が少ないとついAに戻ります。ところがBに変えられる人は、Cがいいと思うとCに、
Dがいいと思うとD、Fというふうに変えていく努力ができます。
Eあたりまで来ると、初めてこれは大きな差になって現れてきます。
Fまでいった人を見て、あれは素晴らしいから自分もFをやろうと挑戦する人も多いのですが、
これができなくてAに戻ってしまう。これが世の中で大変多いわけです」
では2つ目の方法は?
「気づく人になるもう1つの条件は、『人を喜ばす』ことです。
たえず人を喜ばせる気持ちで物事をやる、人生を送る、毎日を送るということです。
これを続けて1年たてば、本当に人が変わるぐらい気づく人間に変わってしまいます」
トイレそうじで有名な鍵山秀三郎氏の著書『凡事徹底』より抜粋
平易な文章で示唆に富んだ人生のあり方をつづっています。