昔と違い、女性も多様な生き方を選べる時代になり、“結婚・出産”より“キャリア”を、さらに「高度な専門知識の習得・研究」へといった道へ進む女性も増えてきて、女性が一生独身でいることもそれほど奇異なことではなくなり、私(女性)としても生き易い時代に生まれてきてよかったと思います。
このように、個人の“努力と才能”により『選べる人生』を送ることが可能な今でも、やはり、女性にとって「子供を持つ」という選択は大きな課題です。
近年の学会で発表された『未受精卵の急速冷凍保存〈ガラス化法〉』は、未受精卵を特殊な凍結液を使って急速冷凍し、長期保存をするというもので、素人には想像もつかない世界です。従来の「緩慢凍結法」による受精卵の凍結保存は広く行われていますが、その方法では未受精卵の解凍時に卵子が壊れ易く、生存率が低いので国内では1例しか出産報告がありません。これらは、もともと、不妊治療の為に研究されたものですが、今後、“ガラス化法”が進み、技術的な面で“安全に、より長期間”保存できることが可能になれば、私達の『人生設計』は大きく変わることでしょう。
つまり、たとえば「癌」は、早期発見・早期治療で完治するようになり“不治の病”ではなくなりましたが、治療によって卵巣の機能が失われる女性が、この方法により事前に採卵・保存しておけば、病気が治ってから体外受精し出産することができ、せっかく癌を克服しても我が子を持つことができなくなるというショックを回避できるのです。それは、つらい闘病に耐える為の大きな力にもなると思います。
また、質のいい卵子を20代の内に採取・保存する『卵子バンク』なるものが可能になりますから、“最適な時期”を逃さないという効果もあります。
例えば“バレエダンサー”は才能があればあるほど、子供を持つ事を諦めざるを得ません。つまり、一流のダンサーとして現役で1年でも1日でも長く舞台に立っていたいと切望し、1日たりとも“稽古”を休もうとしない彼女達は、妊娠・出産期間の“ブランク”を致命的とさえ考えます。その為、医学的あるいは人類学的に妊娠・出産に最適な時期を逃してしまいます。他のスポーツ選手など、多くの人がその問題に悩んでいるはずです。
それが、この“ガラス化法”による『卵子バンク』ができれば、引退後に母親になることを『計画』できることになるでしょう。
ここで“是非を問う”つもりはありません。人生は一度きりです。一遍にたくさんのことを選んで実現できるはずはありませんが、“人生の設計図”を描く時に、可能性があるのとないのでは天と地ほど違います。積極的に生きようとする人にとって“諦めなくてはいけないこと”がひとつでもなくなることは素晴らしいと思います。
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