ひらの税理士事務所




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 悲惨な出来事 
 
世の中で何が『悲惨』なことなのか・・・。
自分の身近で起きていることの中で考えてみると、 私は少し前まで、「障害のある子を持つことは悲惨なこと」のひとつだと思っていたのですが、友人男性のひとりが言ったひとことに心がうるうると温まるのを感じました。

 毎日のようにニュースになっている“家族間の事件”に、胸が痛みます。
祖母が孫を傷つける、親がまだ幼い子供を虐待する、子供が老いた親を死なす、他にも学校での殺傷事件や隣人同士の殺人事件が起こっていない日の方が少ないと言ってもいいくらいです。
 とても仲良くしていた友達同士にだったのに、とても幸せそうに暮らしてる家族だったのに、あんなに子煩悩な親だったのに、あんなに手塩にかけて育てた子どもなのに・・・。
なぜあんなことがおこってしまったのか・・・世間はその原因を諮りかねます。
ただ、そんなことになってしまった家族は『悲惨』だということは、はっきりとわかります。

ある若い夫婦の間に男の子が生まれました。その子は生まれた時から肝臓が悪く、医者に小学校に行ける年まで生きられるかどうかわからない言われていました。毎日お母さんとその子は病院で生活し、お父さんは仕事が終わると毎日面会に行きましたし、休日にはお父さんは朝から病院に出向きました。そんな日々が何年も何年も続きました。
私は「なんて可愛そうな家族なんだろう」と思っていました。
でもそれは間違いです。羨ましいと思えるほど、この家族には“愛”がありました。
今世の中で起こっている痛ましい家族間の事件とは無縁の世界が、そこにはありました。

 先天的に脳に障害のある子を持った夫婦がいました。どれだけの時間、家族で過ごせるのかわからないと思い、その夫婦はその子との写真を事あるごとに撮りつづけました。
その写真には、止めることのできない時間の一瞬一瞬を残そうとしたふたりの思いが映っていました。その子は10年生きることができませんでしたが、その写真を見ると、愛し愛された家族の記録がはっきり残っています。

 世間から見たら、幸せそうに見える、普通の家庭の中で、悲惨なことが起こっていることが多いのです。
夫婦の間でお互いを思いやっているでしょうか。親は子どもの日常に目を向け、話しを聞いているでしょうか。嫁と姑の間がうまくいっているかどうか、それぞれの夫は気を留めてフォローしているでしょうか。
そんな些細なことが何になると思わないでいただきたいです。
 私達は日常のしあわせの中で、家族の愛を知り、生きることを実感し、命の尊さを学び、家族の大切さを理解しなければいけないと思います。

 何の話題から、彼がそんなふうに言ったのかは忘れてしまいましたが、普通のこと、当たり前のことを話すように平然と、彼は言いました。
 「僕は、自分の子どもが障害を持っていたとしても、全然構わないんだよね」
なんで?と私は聞き返しました。
「だって、世の中悲惨なことが他にいっぱいあるじゃない。自分の子どもに障害があることなんて全然悲惨なことだと思わないんだ」
そうだよね、私は大きくうなずきました。
「実は僕も『障害者手帳』持ってるんだよね」
彼の笑顔がまぶしく見えました。