ひらの税理士事務所




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 “やれない” “やらない”
  
ここ1〜2年、景気回復の影響か、団塊世代の大量退職の影響か、新卒者の就職率が上昇しているようだ。今春も大卒,高卒共に就職率96%を超え、96年以降最高なのだそうだ。
私は就職難の真っ只中に就職活動をした。四苦八苦しながらも何とか正社員として職に就くことができた。(ちなみに今の職場ではなかったが‥‥)「この仕事がやりたい!」というよりも、「とにかく職に就かなければ」という焦りが強かったと思う。

 先日、ある報道番組で『若者の格差社会』という特集をやっていた。就職率上昇の裏側で、24時間営業のインターネットカフェに寝泊りするという若者が全国で急増しているというのだ。(全国にネットカフェが増えたからではないかとも思うが‥‥)彼らは、定職に就かない“日雇い労働者”であるため、まとまった収入がなく、アパートを借りることができないという。
実際にネットカフェ生活をしている20代前後の若者3名に密着取材していた。ネットカフェには無料の飲み物、歯ブラシセット、シャワールームも有り、寝泊りするにはそれほど不自由はないようだった。一晩明かすのにかかる利用料金は1,500円程度らしい。取材を受けた若者の中には女性もいて、毎日はお風呂に入れないということで、臭い消しに香水を利用していた。

 その番組は、日雇いの若者を下級層、正社員の若者を上級層と見て、テーマを『若者の格差社会』としていたのである。そして、出演しているコメンテーターも「定職に就けない若者が増えているのは社会問題だ。国が対策を考える必要がある」と、日雇いの若者達を弱者扱いしていた。

 ネットカフェが一晩1,500円として1ヶ月間毎日利用したとすれば、45,000円になる。東京では家賃4万円台は安い方かもしれないが、一般的には20代の一人暮らし用のワンルームの家賃としては45,000円が特別に安いとは思われない。世間にはアルバイトをいくつもやって、正社員よりも遥かに稼いでいる若者だって大勢いるのだ。それでも、定職に就いていないというだけで国が支援する必要があるのか?
番組での若者は「毎日の生活が苦しい‥‥」と言いながらも、日々、日雇いの仕事に行くばかりで、定職を探す場面は一度もなかった。口では苦しいと言いながら、“一生日雇いでいいはずがない!とにかく安定した職に就きたい!!”という危機感や意気込みは全く感じられない。

定職に就けないのか?就く気が無いのか?
まだ、そこまで追い詰められていないのではないか?「アルバイトだとすぐ辞められて楽」などと考えているのではないか?問題の“格差”は、『社会格差』ではなく、仕事に対する『認識の差』である!!と思う。

「ネットカフェ難民」という言葉まで作って大きく取り上げているメディアは、“家が無いこと”を問題にしているように見えて仕方がない。問題はそこではないのだ!!

 アパートを借りるにはある程度まとまった資金が必要になるし、仕事を探すにしても、履歴書に書く住所がないとなればそれは確かに問題かもしれない。だからといって、彼らに住む家が与えられればそれで済むということではないだろう!
多くの企業が厳しい競争の中で、コスト削減のために人件費の安い派遣社員に頼るようになった。そうして、非正規労働者が増えていったと言われている。その現象こそが社会問題だと思う。

 支援すべきは『ネットカフェ暮らしの人々』ではなく『企業』の方ではないだろうか。企業が十分に正社員を雇えるようになれば、本気で働きたい人は正社員になる為に努力するだろうし、自ずと住む家も得られる。まず、やる気がある人が報われるのが順番である。『やれる』のに『やらない』人にまで救いの手を差し伸べる必要はないと番組を見ながら思った。
                                        E・I