ひらの税理士事務所




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アップルのコンピュータを知らなくても、アイフォーンを知らない人はいないでしょう。

その開発者、スティーブ・ジョブズ氏が、2011年10月5日(日本時間6日)56歳で亡くなりました。彼が持つカリスマ性は、多くの人をひきつけ、まだこれから斬新な発送を世界に送り出したであろう夢の商品を想像して、その早すぎる死を悼んでいる人はアメリカにとどまらず世界中に数多くいると思います。

数々の輝かしい彼の経歴を知るにつれ、天才的先駆者であり、21世紀の偉人と賞賛されるのも当然だと思いますが、一方で、彼と関係の深かった人々の“スティーブ・ジョブズ評”を見ると、違った評価がされているのにも興味を覚えます。

「スティーブは、米国のイノベーターの中で最も偉大な一人でした。違う考えを持つことに勇敢で、世界を変えられるという信念に大胆で、そしてそれを成し遂げることに十分優秀でした。この星で最も成功した会社の1つをガレージから作り上げることで、彼は米国の独創性の精神を実証した。スティーブは毎日が最後の日であるかのように生き、私たちの生活を変え、全産業を再定義し、私たち一人一人が世界を見る方法を変えました」

?バラク・オバマ(現アメリカ合衆国大統領)

「他人の脳みそを盗むのはジョブズにとって普通のやり方さ。まず人のアイデアを鼻であしらっておいて、その一週間後には、素晴らしいアイデアを思いついたなんていいながら戻ってくる。そのアイデアというのは、もちろん一週間前に誰かがジョブズに話したアイデアなんだ。我々はジョブズのことを現実歪曲空間と呼んでいたのさ」

?ジェフ・ラスキン(コンピュータ技術者・アップル社のマッキントッシュ共同開発者)

「スティーブはまさに刺激的な存在だ。放漫で、暴虐で、激しく、無い物ねだりの完全主義者だ。彼はまた、未成熟で、かよわく、感じやすく、傷つきやすくもある。そして精力的で、構想力があり、カリスマ的で、さらにおおむねは強情で、譲らず、まったく我慢のならない男だ」

?ジョン・スカリー(ペプシコーラ社長・アップル社長、CEO)

「人は、私がクソ野郎についての本を書いていると聞きつけるや否や、スティーブ・ジョブズについての話を話し始めただろう。シリコンバレーでいかにジョブズが恐れられているか、そのレベルには驚嘆するものがある。彼は人を震え上がらせ、悲嘆にくれさせる。だが、彼はほとんどいつも正しく、たとえ間違えている時でも、その創造性の豊かさには目を見張るものがある」

?ロバート・サットン(スタンフォード大学工学部教授<専門 組織行動学論・管理学論 イノベーション論理学論>)

「民主主義に沿ってたんじゃ、素晴らしい商品なんて創れっこない。闘争本能の固まりのような独裁者が必要なんだよ」

?ジャン・ルイ・ガセー(Be社創業者、元アップル社員)

なかなか辛辣ですが、偉大なる結果を出した人は、周りの他者にとって“ひどい人間”と映ったり、”偏屈・変わり者“と見えたりするのでしょう。

そこが天才たる所以かもしれません。

「あなたの時間は限られている。だから他の誰かの人生を生きて時間を無駄にしてはいけない。ドグマ(教義、常識、既存の理論)にとらわれてはいけない。それは他の人たちの考えた結果と生きていくということだから。その他大勢の意見という雑音にあなたの内なる声を溺れさせてはいけない。そして最も重要なことは、自分の心と直感を信じる勇気を持つことだ。それはどういうわけかあなたが本当になりたいものをすでによく知っているのだから。それ以外は、全部二の次だ」

「未来を見て、点を結ぶことはできない。過去を振り返って点を結ぶだけだ。だから、いつかどうにかして点は結ばれると信じなければならない」

彼が残した言葉です。


天才的リーダーと言えば、わが国では、織田信長を思い起こします。

織田信長は、言うまでもなく、日本の歴史上あまりにも有名な人物のひとりであります。彼の言動は、従来のあり様とはまったく違ったものであったため、変人、奇人、そして、天台宗総本山 比叡山延暦寺を焼き討ちしたということから、宗教弾圧者で、“とんでもなく恐ろしい人”とも評されています。

しかし海の向こうを見据えていた信長の独創的な戦略や思考は、とても魅力的で、われわれを引きつけて離しません。

「誰かいるか!」と呼ぶと、近習がすぐに来て、次の言葉を待つ。

すると、信長は「もう良い」と言って下がらせる。

同じ事を、何度も繰り返し、ある者が「下がれ」と言われて退出する時に、小さな塵に気がついて拾った。

信長は、「ちょっと待て」と呼び止める。

「人は心と気を働かすことをもって良しとするものだ。武士は攻めるも引くも潮の満ち引きのようなものである。合戦は潮合を読んでするものだ、今のその方の退き様は感心である」 

戦国時代研究の貴重な資料となる『日本史』を記したことで有名な、ポルトガル人キリスト教宣教師ルイス・フロイスは、信長の人物像を非常に詳細に記しています。

「彼は中くらいの背丈で、華奢な体躯であり、ヒゲは少なく、はなはだ声は快調で、極度に戦を好み、軍事的修練にいそしみ、名誉心に富み、正義において厳格であった。彼は自らに加えられた侮辱に対しては懲罰せずにはおかなかった。いくつかの事では人情味と慈愛を示した。彼の睡眠時間は短く早朝に起床した。貪欲でなく、はなはだ決断を秘め、戦術に極めて老練で、非常に性急であり、激昂はするが、平素はそうでもなかった。彼はわずかしか、またはほとんど全く家臣の忠言に従わず、一同からきわめて畏敬されていた。酒を飲まず、食を節し、人の扱いにはきわめて率直で、自らの見解に尊大であった。彼は日本のすべての王侯を軽蔑し、下僚に対するように肩の上から彼らに話をした。そして人々は彼に絶対君主に対するように服従した。彼は戦雲が己に背いても心気広闊、忍耐強かった。彼は善き理性と明晰な判断力を有し、神および仏の一切の礼拝、尊崇、並びにあらゆる異教的占卜や迷信的慣習の軽蔑者であった。形だけは当初法華宗に属しているような態度を示したが、顕位に就いて後は尊大に全ての偶像を見下げ、若干の点、禅宗の見解に従い、霊魂の不滅、来世の賞罰などはないと見なした。彼は自邸においてきわめて清潔であり、自己のあらゆることをすこぶる丹念に仕上げ、対談の際、遷延することや、だらだらした前置きを嫌い、ごく卑賎の家来とも親しく話をした。彼が格別愛好したのは著名な茶の湯の器、良馬、刀剣、鷹狩りであり、目前で身分の高い者も低い者も裸体で相撲をとらせることをはなはだ好んだ。なんぴとも武器を携えて彼の前に罷り出ることを許さなかった。彼は少しく憂鬱な面影を有し、困難な企てに着手するに当たっては甚だ大胆不敵で、万事において人々は彼の言葉に服従した」

信長に、「理想や信念を見失った者は、戦う前から負けているといえよう。廃人と同じだ。理想を持ち、信念に生きよ」の言葉があります。スティーブ・ジョブズ氏と共通するものを感じます。

現在の日本国内に戦争はありません。平和ボケしてぬくぬくと、明日という日が保証されたかのように日々をすごしている時代に、大きな震災があり、原発事故がありました。

「天罰だ」と言って、顰蹙を買った政治家もいますが、リーダー不在と言われる自国の未来に、いよいよ不安が増していきます。

しかし、だからこそ、時代を変えてきた先人・偉人へ思いを馳せて、己を鼓舞して生きなければならないと思うのです。結果は必ずついてくると信じることがすべてのような気がします。アンビリーバボー(信じられない!!)な、発想と行動力が、暗い時代を変えるのです。                       

K・N